縞衣の小説ブログ

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夕雨と真辺の噂(岩尾七海とSevenSea5.8)

 夕雨が話題に上った女子トークを、真辺はたまたま耳にし、さっそく夕雨に報告した。


「岩尾、女子が今朝のお前の話題で盛り上がってるぞ」
「ほえ?」
 昼休み、昼食後。隣のクラスの友人に少し用があって出かけていた真辺は、女子が大いに盛り上がっていた事を本人に伝えようとしたが、その反応が『ほえ?』である。いくら食後で腹が満たされウトウトしていたからと言って、これではせっかくのイケメンが台無しだ。
 残念イケメンのレッテルを貼られてもおかしくないが、まだ入学して二か月目。今のところ、夕雨は『少し抜けたカワイイ性格』で納まっている。


「女子がお前の噂してたって」
「ふーん」
「何話してたか気にならんの?」
「別にどーでもいいよそんな話。それより眠いし」
 ふぁーっ、と人目をはばかる事もなく大あくびする夕雨に、真辺は小さく笑った。
「相変わらずマイペースだな」
「何が?」
「お前、自分がそこそこイケメンだって自覚ないの?」
「真辺の方がイケメンじゃん、キリッとしてて」
「俺は目つきが鋭くて性格キツそうって言われるんだけど」
「え、どこが?俺は初めて会った時から、キリッとしててカッコいいって思ってたよ。確かにちょっと眼光鋭い感じはするけど、瞳自体は優しそうな色してるし」
「……お前の言ってる事、たまに少し難しいわ。瞳の色とか、なんとなく言いたい事は伝わってくるけど俺にはよく分からん」
「ふーん、あっそ」


 適当に相槌を打ち、机の上の、自分の手の甲に顎を載せる夕雨の頭を、真辺はわしゃわしゃと髪を混ぜるように撫でた。
「セットが崩れる~」
「大してセットしてないだろ」
「昨日七兄が頭撫でてくれたんだ~。幼稚園の時ぶりかな?!すげー嬉しかった」
「そっか、良かったな」
 真辺は、「お前は噂通りブラコンだ」という言葉を隠してそう言った。それを言ってしまうと、夕雨はおそらくムキになるからだ。それ自体には慣れているが、今はせっかく機嫌よく話しているので、そこに水を差すような事はしたくない。


「俺、やっぱり七兄が好きなんだなーって実感した。幼稚園の時も、大好きだったんだよ。帰ってきてからはギクシャクしてたけど、昨日ドライブにって誘われた時、思い切って一緒に行ってホントに良かった」
「うん、一歩踏み出せて、夕雨君も少しずつ大人になってるな」
「何だよそれ、上から目線だな」
 上目遣いに文句を言う夕雨に、真辺は「そうじゃないし」と笑った。


「眠いなら寝てろよ。起こしてやるから」
「うん。……て、何か話を逸らされたような気がするけど」
「続きがあるなら後で聞くよ。今は寝ておいた方がいいぞ、でないとお前また授業中に突っ伏するほど眠り込んでお説教くらうぞ」
「今寝ても授業で起きれる保証はない……」
 そう言いつつも、暖かな日差しの差し込む席で、夕雨はすぅーっと眠りに引き込まれていった。


 真辺は読みかけの小説を取り出し、夕雨の眠る机に片肘をついてページをめくる。
 4組では、日常的によく見られる光景だ。
 そして、この『光景』が学年中で噂され、『眠り王子と文学護衛』という、少女向け小説のタイトルのような呼び名までつけられているという事を、二人は何も知らないのだった。

 

6.深優と彼氏

5.5.夕雨の噂

 

☆ ★ ☆ ★

縞衣です。

岩尾七海とSevenSea、更新するはずが先延ばしになっていたので集中的に更新しましたが、続きは現在執筆中ですので、次の更新までまた間があくかと思います。

ゆったりとお付き合い頂けますと幸いです。

 

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